土砂降りの雨が大地を、命を、僕らの罪を洗い流す。僕の放った終了措置によってようやく人類は終焉を迎える。
大粒の雨が充満し霧となり、僕の世界は目の前の君だけを捉える。僕はやっと考えることをやめられる。後悔、願い、失望、それら今まで抱えてきたこと全て。最後に君にぼくを知ってほしくて、最後にぼくは君を知りたかった。
…
でも、『君』なんていない。
本当は全部僕の一人芝居なんです。
僕は孤独に幸せな夢を見ながら終わろうとしている。それは別に構わない。
夢幻でも妄想でもいい、エリは閉口することでニツをとりこもうとした。
離れたりくっついたりするから痛みを伴う。ならば、わからなくなるまで均一にして混ぜて混ぜて1つのものにしてしまえばいい。それで終わりだ。
他のなにからも干渉されず、静止したまま永遠にいっしょの安楽を過ごせる。
…
きっとカミサマにとっても予想外だっただろう。
彼女は口を開いたのだ。
「君が自分を押し殺し、姿を隠すならそれでいい。君が諦めてしまったものを僕は探しに行く。君が欲しかった可能性を拾ってくる。
だから、僕が僕じゃなくなってもどうか待っててくれないか。僕がこれから亡くしてしまう僕の全てを、大事に持っていて。必ず会いに行くから」
細かく千切れ弾け飛ぶ彼女を見た。
それで全てが産まれた。
僕の叫びは、苦しみという概念になった。僕の涙は、悲しみという概念をになった。僕の自責は命となり、僕の記憶は欲望となった。
僕が空っぽになっていくので、自分が誰なのかすら分からなくなった頭で僕はあわてて彼女を繋ぎとめた。
それからどれくらいの時間が経ったかわからない。
僕はなにかを守るように誰も来ない場所に隠れている。守るものがなんなのかわからない。
ただ、何かを待っているという確信があるのだ。