ぼくたちはいいものを見つけた時、洞穴の中にそれを隠す習性がある。そして見失わないように、穴の上には自分の肉球の跡をつける。
夜になると、何匹かの仲間がグラウンにいる。ぼくたちは皆何かを信じて生きていて、その信念は強いほど大きく育つ。そして、巨木となってこの山に乱立しているのだ。
そのなかでも一際大きく、太く、根は枝分かれし縦横無尽に張り巡らされ、空を覆いつくす枝葉から奇怪な果実たちを実らせた者がいた。ぼくはそいつのことを「友利師狼」と名付けている。
今日もぼくは友利師狼のところへ向かった。
そこはいつも薄暗いせいで、奴の領地に1歩でも足を踏み入れたら足元は謎の茸が生えていて、光は遮られ紫や緑の空気が満ちている。枝葉からぶら下がった果実たちの仕業なのか、どことなく香ばしい匂いがする。 幹の周りには、既に仲間たちがいて思い思いに寛いでいる。
ここは誰にも邪魔されない深層心理。すべては友利師狼が正しく導いてくれる。
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